水素分子は、原子量1の原子が2つ結合した状態で、分子量2と最も軽い分子として存在しています。水素は不安定な原子軌道であり、他の原子相手に1つの電子を与えたり、共有したりします。それゆえ、宇宙空間の総質量の3/4を占める元素であるにも関わらず、そのほとんどは何かの原子にくっついた、化合物として存在しています。

 酸素が結合する反応を酸化と呼び、酸化される物質は電子を奪われます。反対に、水素が酸素を受け取ることで、その物質は還元されます。酸素を含む分子の分子構造により1つの電子を奪う力が強くなったり弱くなったりしますが、電子を奪う力が強くなった状態の含酸素分子のことを活性酸素と呼びます。

 動物がエネルギーを生み出す基礎的代謝反応であるミトコンドリアの活動だけで、呼吸する酸素の約2%の活性酸素が生まれるといわれています。人間が呼吸するといわれる10,800 Lの空気のうち酸素は20.9%なので2,257Lが酸素になります。つまり1日約45Lの活性酸素が代謝によって生まれる計算になります。

 活性酸素は白血球(好中球)を中心に体内の免疫機能や感染防御、細胞間のシグナル伝達、生理活性物質で用いられることが多いのですが、最も強い活性酸素(悪玉活性酸素)であるヒドロキシラジカル(・OH)は、糖質やタンパク質や脂質などあらゆる物質と反応します。

 ヒドロキシラジカルは反応性の高さゆえ通常の環境下では長時間存在することはできず、生成後速やかに消滅するのですが、消滅する際にミトコンドリア機能障害、細胞障害を誘発し、癌、パーキンソン病、認知症等の病気の原因物質となるといわれています。

 水素分子、β-カロチン、ビタミンE、尿酸、リノール酸、システイン、フラボノイド、グルタチオンは生体でヒドロキシルラジカルと結びつき、水分子に変換することができるとされています。特に水素分子は、ヒドロキシラジカルを選択的に水に変えていくといわれています。さらに、水素分子は最小であるため、他の分子と異なり血液脳関門を通って脳内で活性酸素を水分子に変えることが期待できます。

 わが国では年間10万人以上心不全が発生しているといわれています。心不全により血液循環が滞ると脳の灌流低下や低酸素血症によって脳障害が引き起こされ心肺停止後症候群が発生します。慶応大学病院では自己心拍再開後も昏睡状態が持続する患者を対象とし、集中治療室で 18 時間 2%水素添加酸素を人工呼吸器下に吸入する治療を先進医療Bとして行っています。

 活性酸素を消去すれば良いという安易な考え方は禁物です。しかし、現代文明を生きるストレスの中で人体に備わった抗酸化防御機構が崩れてしまった場合には、一時的に水素分子の力を借りることもよいのではないでしょうか。

Salon de INTAKE

PAGE TOP